指きり

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あの指きりをしている指は 昨夜は僕のものだったのに。 あの小さく細い指を爪を 愛するように握っている指は、 前夜は僕の肌の際どいところを探っていたのに。 目の前の微笑ましいシーンは僕には重い。 絶対に勝てないものをひけらかすように、 いつまでも手に入らないものを見せつけるように。 草太と雄介の指きりを僕は部屋の入り口に立ったまま眺めている。 そんな約束、僕が、僕が…… 僕に気づいた草太のとなりの小さな指の持ち主が僕に近付く。 手を繋いだ大きな指をその小さな手で掴み僕の指と繋げる。 「 ユビキリダヨ、ナカヨシ 」 と結んだその幼き言の葉に、恥ずかしさで僕はほほを紅らめた。
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