廃墟特集

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 機械トラブルや事故もなく本日の業務が終了し、そのまま我が家へと向かう。実家にいる好美には心配しなくて良いと連絡してある。余計なストレスをかけさせないのも夫の努めだ。  真新しい家の外観は傷一つ見当たらない。ここに幽霊が巣食っているなんて、誰も思うまい。さて、今日は取り憑いている物を発見できるだろうか。  ドアを開けて家の中に入る。物音はない。幽霊が活動するのは夜中だから当然だろうけど、それでも警戒してしまう。  まずは夕食を作って、翌日の朝食の準備もしておく。朝は車の中でも食べられる物が良い。心霊体験をした後は家の中で食事したくない。  夕食を作った後は、さっさと食べ物を胃に入れて食器を洗う。早くしないと仕事の疲れで体が重くなるからだ。そして、洗い終わったらすぐにキッチンにある小物類をビニール袋に詰めて、外の物置へと持っていく。さっき使った食器類もだ。  何回か往復してすべて出しきった後は汗だくになっていた。時間は二十時。僕はいつも通りテレビのリモコンを手に取って電源を入れた。テレビ番組が一日のご褒美だ。何でも良いから見とかないと、今夜の心霊現象に耐えられない。これは心の平安を保つための大切な習慣なのだ。 『それでは、今から潜入してみたいと思います』  緊張した面持ちの女優が画面に映っている。右上の方を見ると、『幽霊の目撃者多数!? 日本の怖い廃墟特集! 2時間スペシャル!』と表示されていた。どうやら今をときめく人気女優が、危険とされる廃墟へ潜入する番組のようだ。 「おお、五郎さんが好きそうな廃墟特集だ」
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