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『ちゃ♪ちゃん♪ちゃら~~~ん♪』
【らぢお体操】が二番目の体操の旋律がおわる頃合い、ついで三番目の体操の出だしが現れる寸前。老人は首筋、頸動脈の太い血管が通ってるあたりにくだものナイフをスッと押し当て、腕をあげる動作にあわせて琴線を掻き切るようにして切断した。
そうそれは…、まるで誰かに「そうしましょう」と強く促され納得したかのように。。ためらいもなく実行に移されたのだ。。
途端に、老人の首から真っ赤な鉄錆び臭い液体が凄まじい勢いで噴出した。
老人の身体はみるみる朱に染まっていった。
…担当の看護師が異変に気付いたのはしばらくしてからだった。
ブツ!というホースを絶ち切ったような、病院の病室では起こり得ない異音と、みるみる鮮やかに間仕切りの白いカーテンを染め、そして室内全域に広がっていく正体不明の赤い塗料に驚いた隣のベッドの患者が押したナースコールによって看護師は、異常事態を把握したのだ。
老人は当然のごとく失血死していた。もはや即死といってもいい状態だった。
「はい、終了です」
…この声と共に老人は、【らぢお体操】にあわせて死亡することに見事成功したのだった。
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