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らぢお体操第一。腰をひねりながら腕を回す運動。
世間様は、まだまだ明るい日差しの中だった。
今は夕方。だいぶ西に傾いた太陽が本日最後の煌めきを地上に注がんと、いじらしく赤く輝いている時分である。
『ちゃちゃちゃーん♪ちゃちゃちゃーん♪』
またどこからか、あの軽快なリズムの【らぢお体操】のピアノの音色が、誰かの鼓膜に響いてきた。
ここは夕暮れ真直の大空を、ただ一機で飛んでいるヘリの中。
いわゆるコクピットの座席の上である。
「チャラーン♪テレビをご覧のキッズたちこんばんわ!バッチ―です!」
「こんばんわぁ!ベリーチュリーキッズのみんな見てるかなぁ~~♪ビッチ―だよん♪ヒャッフー!」
≪ベッチュリー♪♪はっじまるよー♪♪≫
最近民放ではすっかり落ち目になってしまった若手芸人と、民放では主に全国一局ネットのラジオ一本で活躍する、キッズたちにはそれなりに顔は知られた三十手前の地下アイドルが無駄で無用な大きすぎるジェスチャーでヘリの後部座席ではしゃぎながら、夕方六時から始まるキッズ向け番組の中継カメラの側まで寄って自分たちの鼻の穴の奥まで覗かせるくらい顔をドアップで写させている。
「ふふ。バカは放っておいて体操するか」
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