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コクピットの、パイロット席に座り夕暮れの街並みが良く見えるよう機体を操っていた中年の、表情がキリッとしたままシールみたいに張り付いたように固定されたパイロットの男は、何を思ったのか機体中に【らぢお体操第一】の音声を響くように流しだした。
『…腰をひねりながら腕を回す運動!』
「はい、はいっと♪」
途端にヘリは、通常の飛行ではありえないしっちゃかめっちゃかな挙動をしはじめた。
「えっ!?うわ!どうして【らぢお体操】なんか流れだして…って?えっえ?なんだおい!!むっちゃ揺れてるぞおい!ちょ、ちょ!お前ら説明しろよ!おい!!」
「うえっ!ヘリがスッゴい揺れてるよ♪アクロバットかな?うん?めっちゃ気分悪いよー♪でも大丈夫だよー!みんなビッチ―を応援してねェーーー♪ヒャッ…フゥーーン!!んん!?」
あくまでも生中継によくある放送事故の一環として楽観的に事態を捉えているビッチーお姉さんと、さすがにこれはおかしいのでは?と感じた落ちぶれ芸人が、口調を荒げてカメラマンとディレクターに問い正している。
だか、問われた二人もこんな異常事態を想定してはおいるわけもなく、しかたなく恐怖に歪んだ眼をコックピットの方に向けるしかなかったのだが、しかし、彼らが目にした当のパイロットはと云えば、、、
『ちゃららんらん♪ちゃららんらんらーん♪』
「ほいっと!よいしょっと!」
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