らぢお体操第一。胸を張って背を伸ばす運動。

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らぢお体操第一。胸を張って背を伸ばす運動。

軽快な、実に軽快でリズミカルな【らぢお体操】のピアノの音律が、とある都市のビジネス街の六階建てビルディングの屋上で木霊(こだま)している。 『ちゃーらーららららら♪』 その屋上では、パンプスを脱ぎ捨てベージュのストッキングだけになった一人の若い女性が、無漂白のシールを貼り付けました的な面持(おもも)ちで正面だけを見据えながらスッと立ち、【らぢお体操第一】の出だしをさも(たの)しげに口ずさみ、やがて一歩一歩着実に、屋上の端へと足を運びはじめた女性。 ここは、地上25mの高さから下界の雑踏を見下ろせる場所。その高さの、周囲に転落防止の金網すら張られていないむき出しのコンクリートの色あせた灰色の建物の上を彼女は、【らぢお体操】のリズムに合わせて歩んで下を覗くのだ。 そして、、、「うまく出来るかな?」の一言のあと。 『腕を後ろから前に回して背を伸ばす運動~~♪』 との、音声の合いの手にあわせて。 「よっ!」 若さ溢れる、とっても元気のいい掛け声とともに彼女はそれなりに豊かな胸を張って、腕を一回、二回と大きく振り、そして一歩すすんで身体を宙に浮かせて、、、 ……やがて、地球の引力にグイッと引かれて落下した。     
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