11人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
「再び過去をやり直すって事は、タイムリープしたらもう、現在には戻って来れないって事ですか?」
「そう。もう一度、人生をやり直すんだ」
にやりと笑うと、早川はコーヒーをすすった。
「だけどね……」
カップを揺らしながら、早川は続けた。
「その世界は、過去であって過去ではない……。全く違う世界……。パラレルワールドだっていう説もあるんだ」
「パラレルワールド……」
「ま、信じるか信じないかは、乙羽ちゃん次第だけどね」
担当初日から、三つ年下の私を『乙羽ちゃん』と呼ぶ早川は、悪戯っぽい笑顔を私に向けた。
「もう。またからかったんですね。真面目に聞いて損した」
少しむくれてアイスティーを飲み干す私を見て、「ごめんごめん」と実に可笑しそうに早川が笑った。
早川はいつもそうだ。
会う度、都市伝説もどきの話題を持ち出してくる。
まあ、それをいちいち信じてしまう私もどうかと思うが……。
きっと早川にとって私は、妹みたいなものなんだ。
「それじゃ、いくつかシミュレーションしてみますので、出来たらまたご連絡いたします」
ほんの少しの胸の疼きを笑顔でかき消すと、私は素早く伝票を掴んで席を立った。
最初のコメントを投稿しよう!