桜の下でもう一度

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「ここが、現在だとする」 「はい」 同じように左手のゲンコツを見つめると、私は真剣な顔で頷いた。 「で、こっちが過去」 「はい」 少し持ち上げた早川の右手のゲンコツに、視線を移す。 「タイムスリップというのは、現在の人間が、過去に移動する。つまり、過去には過去の自分がいる」 左手を右手にくっつけると、早川は私の顔を上目遣いに見た。 「なるほど」 私が理解したことを確認すると、早川は再び両手を離してテーブルに置いた。 「タイムリープってのは、過去をやり直す。つまり、時間が巻き戻るんだ」 「え? どう違うんですか?」 不思議そうに見つめる私の前で、早川は左手を右手に近付けた。同時に、右手をテーブルの下に仕舞い込んだ。 「つまり、過去の自分に戻るってこと。タイムスリップは、現在の自分と過去の自分が存在することになるけど、タイムリープの場合は、自分は一人だけ。過去に戻って、時の流れを繰り返すんだ」 「へぇー……」 私は早川の両手を見つめたまま、薄くなったアイスティーを一口飲んだ。
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