うそつき日和

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うそつき日和

今日ぐらいは、嘘をつこう。 ずっと、真正直に生きないで、たまには、こんな日ぐらい、迷惑をかけない嘘をついたって、いいじゃない。 少しぐらい傷のついた心には、私にはあくどい嘘が必要で、だからと言って、癒されるわけじゃないけど、でも、それぐらい、私は心の中で叫びたい。 仕事がある。ない人には、申し訳ないけど、仕事がある。 スーツを着て、靴を履く。外には晴れていない空が続いていて、傘は持たない。 電車は混んでいたけれど、座れないほどではない。ポールの横にある、イスに座る。モケットは私にとっては少し広めで、両側の人に迷惑はかからない。そのことが、私にとって悪いものにならないけれど、ちょっとした安心感が私を油断させる。 職場の座席は、広いとは言えない。少しばかり、不満があるというわけではない。机上には様々な書類が放置され、それが座席を狭めていた。 少しばかり、窮屈なその空間に私はため息をつく。机の上を散らかした私が悪いと分かっていても、それを受け入れたくない。例えば、このような書類を置いただけで作業スペースを狭めてしまうような机を買った会社が悪いとか、多少、責任を押し付けたくなる。     
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