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ふむふむ、狭山は、自然と話を聞いた。別にどうこうというわけではないけれど、相談にのる、という言葉通りと言えば、そのままみたいな、本当に話を聞くという行動を彼はとった。
「それで、あんなに嫌がってたと」
「まあ、そういうことかな。人の提案に反対ばかりして、自分の案を出さないって、正直、こちらとしては、いるだけ迷惑」
「すごい、言いようだね」
彼の声はあくまで冷静で、感情が籠ってないというよりも、一歩引いたところに心があるかのような、聞き方だった。
「でも、まあ、課長も課長なりに考えての発言なんじゃない」
天秤持ち気取りの彼は、私に一言、そう言った。
「そんなことはない」
私は断言する。感情的になっているのは、こっちなのかもしれないけれど、それ以上に私にとって言いたいことは山のようにあった。
「僕だって、代替案が出ないけど、それをするのだけは避けた方が良いと思う時だって、一定量あるし、分からなくはないけど」
「そういうもの、かな」
彼の冷やされた発言に、私の感情もそれに近づけられる。
私は熱かったのだろうか。そんなことが、心のどこかで通り過ぎる。
「もうすぐ、戻らないと、それこそ課長が何言うか分からない。お開きにしましょう」
「わかった」
どこか不完全燃焼で話を遮られた私は、そのまま手元に持っていたそれを飲み切り、ゴミ箱へ投げた。
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