うそつき日和

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私は、例の企画について狭山に話したいことがあり、彼を探した。途中で別の同僚に尋ねると彼を休憩室で見かけたという話を聞いた。私は言われた通り、そこへ向かった。カップドリンクはそこでしか売ってないことから、私は片手に小銭が少しばかり入った財布を持参し、扉に埋め込まれた小さな窓の狭山の姿を確認した、だけならば、私は平気でそこに立ち入っただろう。 休憩室には、狭山だけではなく、課長もいた。それは、別々に存在するのではなく、何かを伝えているように見えた。 前ならば、その光景を自然に眺められたのかもしれないけれど、今の私は平気でいられるほど、安らかなものではなかった。埋まってなかったピースが全て合致し、私の方に向くことのない矢印が大きく描かれているパズルが完成したように、私は思った。 その日、私は、仕事が手につかなかった。その様子は課長に目を付けられてもおかしなものではなく、ただただ、それがばれないように平然と一日を過ごすことに、意識を向かせた。だから、いつも以上に私は疲れた。軽い腰痛と、鈍い頭痛が私を襲う。灰色に染まった空が、私に光を与えまいと、仕事しているのではないかと、想像する程度に、私は堕ちていた。 今日は、ちゃんと寝よう。もし、今日と明日が同じだったら、私は嘘をつこう。 こんな日は、絶好のうそつき日和だから。     
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