蜘蛛の恩返し

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 ある日、男はついに作戦を実行に移すことにした。 「実は知り合いの占い師から聞いた運気がアップするおまじないがあるんですが、一つやってみませんか?」  もちろん男に占い師の知り合いなんていない。 「え、やってみたいです」  女はフレンドリーな性格なので、断りはしないと思っていたが、案の定だった。 「こうやるんです」  男は左手薬指から伸びる赤い糸を女の薬指に巻き付けた。女からは赤い糸は見えていないはずなので、何かを巻き付けているような仕草にしか見えないはずだ。  女はされるがままになっているが、男の心臓は異常なまでに早い鼓動を刻んでいた。  男はようやく糸を巻きつけ終えた。男の薬指から出る赤い糸は女の薬指で固く結びつけられていた。 「これで完成です。これで運気がアップしたはずです。これからきっといいことが色々起きますよ」 「まあ、嬉しい。何が起きるか楽しみです」
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