御曹司少年の話。

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「それじゃ、渡したぞ」 そう言って彼は何処かへ行ってしまった。呼び止めて問いただしたかったが、それも叶わない。……そんなに嬉しかったんだろうか。思えば彼はかなり浮いている人間だ。友達は愚か、きっとバレンタインデーといったイベントに何のゆかりもない人生だったんだろう。そんな男子が初めてチョコを貰った。ともすれば三倍返し、もとい三万倍返しをしても何らおかしくないように思える。周りの同級生が楽しそうにチョコを交換していたり、面白おかしく傷を舐めあっている中で、彼だけが一人で帰り支度をしている場を想像すると、何故か涙が出そうになった。 「明日、話してみるかな……」 そんな思いは容易に口に出せた。 とりあえず、この大金をどうやって親に説明しようか。
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