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不快な高音、もとい携帯のアラーム音が部屋中に鳴り響いた。昨日の深夜に設定したアラームは、俺の体を起こすには十分な刺激だった。時刻を確かめると正午に差し掛かる手前。必要以上に寝たというのに、頭が重い。それに、思い出せないが悪夢を見ていた気がする。
夏休みに入って、俺は自由気ままな生活を送っていた。好きな時間に寝て、嫌いな勉強はしない。両親は仕事で忙しく、俺を止める人間は誰ひとりとしていなかった。今日も好きなだけゲームをして、カップラーメンを食べて、惰眠を貪る。この繰り返しだ。
友人達は夏休みだというのに塾へ通っていたり、朝から晩までの部活動に勤しんでいる。子供たちのそんな姿を見て、大人達は満足げに頷いている。その光景は、俺には馬鹿馬鹿しく見えてしょうがなかった。塾に通う事がそんなに大事だろうか。部活動に必死になることがそんなに尊いだろうか。それって、本当にすべきことなんだろうか。そんな不満は声にもならなかった。
未だ冴えない頭で、カップラーメンのお湯を沸かそうとキッチンへ向かった時、ふと気がついた。カップラーメンの予備が切れていた。冷蔵庫の中を覗くも、調味料ばかりで腹を満たせそうなものは見つからない。……買ってくるしかない。そうして、俺は数日ぶりに外へ出ることにした。
外へ足を踏み出すと、すぐそこには猛暑が広がっていた。燃え盛る太陽が俺の肌を焼き、日差しはコンクリートに反射してじりじりと暑い。部屋のカーテンを締め切り、クーラーを付けていたので気付かなかったが、どうやら今日は真夏日らしい。脳裏に脱水症や熱射病といった言葉がよぎったが、わざわざ対策するのも面倒に感じてコンビニの方へ歩き出した。目指すは徒歩で五分程度のコンビニだ。久々に歩くコンビニまでの道のりが、いつもより長く感じるのは猛暑のせいだろうか。家の瓦や窓ガラスが日差しを反射して、俺の目に飛び込んでくる。
扉を引いてコンビニへ入ると、独特な入店音と店員の「いらっしゃいませ」という声が店内に響いた。その声に意識を傾けながら、カップラーメンが置いてある棚へ歩みを進めた。お目当てのカップラーメンをいくつか手に取り、カゴの中に投げ入れようとした時、隣の商品に目が止まった。
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