労働は尊い

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 牧場のは朝は早い。まだ夜も明けきらぬうちから起き出して、手早く身支度をして朝食を摂る。  牧場の仕事は体力勝負だ。だから朝食はしっかりと摂る。朝からボリューム満点の肉料理とオムレツ、パンにサラダにミルク。  肉はうちの牧場で潰した肉だ。出産適齢期を過ぎた雌の肉なのでやや質は落ちるが、代わりに脂が乗っていてこれはこれで上手い。商品にならない肉はこうして自分達で消費する。  朝食を済ませたら、さっそく仕事だ。  まずは鶏の世話。鶏舎に入ると鶏達が一斉にこっちを見る。鶏ってのは案外と気性が荒い。飛べないと思われがちだが、興奮すると飛びかかってくるのだ。鉤爪と嘴の攻撃力は侮れない。  なので刺激しない様にそうっと、ゆっくりした動きで近づく。藁を敷いた鶏舎のあちこちに転がる卵。うっかり踏まない様に注意深く藁を掻き分け、籠に集めていく。  今日の収穫は籠二つ分、およそ30個。雌鳥の数と同じ。よしよし。  籠を載せた台車を押して、鶏舎を出る。そのまま隣の建物へと台車を運んでおく。この卵は後で通いの従業員達が洗浄と梱包をした後に市場に出荷する。  次は豚だ。豚舎に入ると一斉に豚が鳴き始めた。餌をくれるとわかっているのだろう。入ってすぐ脇に積んである飼料袋の中身を手押し車(トロッコ)にざざーっと流し込み、中央通路を押して進みながら柄杓でざざーっと餌箱に入れていく。  奥には子豚用の特別房があり、そこでは母豚が子豚に乳をやっていた。 「そろそろ親から離すか」  だいぶ大きくなってきている。このくらいなら離乳食に移行してもいいだろう。母豚はこれで四度目の出産だ。産まれる子豚の数も少なくなっているし、そろそろ御役御免だろう。後は美味しく食べて今までの労をねぎらってやるとしよう。  安心しろ。お前が産んだ子豚は俺が責任持って美味しい肉に育ててやるからな。
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