労働は尊い

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 生き物は食えば出す。なので豚舎の掃除は餌の後にしばらく時間を置いてから、従業員達がやる様にしている。  豚の後は牛だ。牛舎は他の畜舎と違って朝から住み込みの従業員が働いている。 「おはよう」 「おはようございます!」  牛達はそれぞれ牡牝に分けて放牧している。牡牛を放牧してから柵を開けると牝牛達は自分から牛舎の奥へと向かう。牛舎の奥には搾乳室があり、夜のうちに溜まった乳、牛乳を搾る。更にその奥の扉を通って牝牛達は放牧される訳だ。 「どうだ、牛達の様子は」 「わりと順調に育ってますよ。そろそろ何頭か出荷出来そうです」 「そうか。次の競り市までには充分間に合うな」  乳を出す牝牛と違い、牡牛は最初から肉用として育てられる。基準をクリアした牡牛達は競り市へと出荷されて肉になる。  従業員の言葉に満足した俺は、次の畜舎へと足を向けた。  この畜舎には、新しい食材となるであろう生き物が試験的に飼育されている。長らく野生生物であった、その種。雌雄によって気性が分かれるという特色を持ち、雌は比較的穏やかだが雄は攻撃的、しかも群れて行動する事が多い。  狩る為にはこちらも団体で挑まねばならず、非効率だと昔から言われていた。畜産が発達して、安定した飼育方法が確立されて、ようやく試験的な飼育が認められたのだ。  難しいが、やり甲斐はある。牧場主として、その飼育施設に認められた事が誇らしい。  この種は小型種だ。鶏よりも小さい。必然的に可食部も少なくなる。また、豚は妊娠期間こそ長いものの多胎なので一度に5~10頭ほどの子豚が産まれるが、この種は妊娠期間が一年に満たないくせに産まれるのは1~2匹。まぁそこは牛も同じだが可食部としては牛の方が優秀と言えた。  ここまでくると何らメリットが無い様に思えるが、既存の種を遥かに凌駕する点がある。  何せ、美味いのだ。
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