労働は尊い

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 肉質は柔らかく、脂が乗っている。何回か野生のモノを食べたが、あれは美味い。  生はもちろん、煮ても焼いても美味い。焼いてるそばから溢れる肉汁と香ばしい匂い。煮込めばトロリとして、口の中でほろほろと解れて溶け、後には脂の旨みと甘みが口に広がる。  ……いかん、涎が。  今まではただ野生のモノを狩っていたが、この試みが成功すれば安定した供給が見込めるだろう。  出産数こそ少ないが、奴らの繁殖率は高い。生息地域によって個体に違いがあるのだが、掛け合わせてみても面白そうだ。  奴らはそこら中にいる。コロニーを作って群れて暮らす生き物だ。面白いのはその生態だ。普通、群れて暮らす生き物はハーレムを作る事が多い。全ての個体は総じて母体を一つとするか、一匹の雄が全ての雌を独占する。  だが、この種は違う。あくまでも集団生活をしているだけであり、群れを率いる個体はいても他の個体同士で番い、繁殖する。何とも興味深い。  おかげで繁殖は案外と楽そうだ。  こちらで種付けをする手間が無い。この種には明確な発情期は無いらしく、いつでも繁殖可能なのだ。更に雄の性欲が強く、雌雄を同じ場所に閉じ込めておくと雄が雌を襲う。生存本能、種の保存本能が高い様だ。これは楽でいい。時期を見て繁殖部屋に放り込めば勝手に種付けしてくれるのだから。何て効率的なのだろう。  そんな事を考えながら畜舎に入る。途端に耳を塞ぎたくなる様な耳障りな声。 「こいつが難点なんだよなぁ」  そう、奴らは鳴き声が煩いのだ。雄は低く、雌は高く。鳴き声が大きいのは雄だが、雌の中にも鳴き声が大きい個体がたまにいる。高くて大きな鳴き声。本当に耳障りで仕方ない。  ここをどう品種改良していくかが今後の大きな課題となるだろう。
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