労働は尊い

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 一通りの世話を終えたら自宅に戻って風呂場で家畜の匂いを落として事務所で一服。ミルクが美味い。 「やっぱりミルクは搾りたてが一番だな」  市場に出すには煮沸処理などをしなければならないが自分達で飲む分には問題無い。 「今日のミルクは格別ですね。何せ新しい種のミルクですから」 「まだまだ量が採れないのが残念だよな。美味いけど少ない」 「牛とブレンドするか?」  従業員達が口々に言うのを聞きながら、至福のひとときを過ごす。 「さぁ、仕事の続きだ」  飲み干したカップをテーブルに置いて声をかければ、従業員達からはやる気に満ちた声が返ってくる。  この、のんびりとした牧場で、俺は牧場主として精一杯の事をしようと思う。  その為にも、新しい種の繁殖を成功させないとな。  これからどんどん忙しくなるだろう。新しい種も増やしたいし、従業員も募集しないとな。  なぁ、アンタどうだい? 興味は無いかい?  ここに来りゃ美味いモノをたらふく食わせてやるぜ?  出会う機会を待ってるよ。  ……うん? あぁそうか。牧場の名前を言ってなかったな。うっかりしてたよ。すまんすまん。  だが、あいにくと俺の牧場には名前が無いんだ。  だから新しい種を飼育しているって事で、こう呼ばれてるよ。  ──ニンゲン牧場、ってね。
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