労働は尊い

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 今まではずっと野生の魔物を適度に狩って適当に喰っていた。  だが、魔物の肉は総じて肉が固い。気性の荒いモノが多いので常日頃から暴れているせいで筋肉が発達、つまり脂身が少なく筋張っている。  俺達魔族とて、どうせ食うなら美味いモノが食いたい。  そこで目をつけたのがニンゲンだ。  ニンゲンはここ最近、千年くらい前から一気に増えだした。脆弱なので狩るには問題無いが、群れて反抗してくるし何より小さい。チョロチョロして目障りではあるが、わざわざ餌にするなんて考えてもなかった。喰えば美味いのだが。  だがニンゲン達は面白い事を始めた。弱い魔物達を捕まえて飼い慣らし、育てて増やし始めた。最初は何をしているのか意味がわからなかったが、わかれば俄然興味が湧いた。  自分達で食材を作る。そうすればわざわざ危険を冒して魔物を倒す事も無い。なるほど、身体は脆弱だが頭は使えるらしい。  ならば、と真似してみた。魔物の肉が美味くなった。  適度に食わせて適度に運動させる。筋張っていた肉は脂が乗って柔らかくなった。  こうなると、だ。  ニンゲンも飼い慣らせばもっと美味くなるんじゃないか?  こうなる訳だ。  そうしてこの牧場での試験的な飼育が決まった。  適当に攫い、ニンゲンの巣に似た畜舎で飼う。もちろん逃げない様に工夫して、だ。  おかげで少しづつだが、増えてきている。順調だ。  魔族の中でも下級の者達は食べ応えがある野生種を好むようだが、上級魔族には美食家が多い。需要は大いにある。俺の前途は洋々だ。
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