九章 神戦

16/22
42人が本棚に入れています
本棚に追加
/255ページ
「くそ、ヴェルンだ」  一気に緊張が走る。リクトは小太刀の鯉口を切りながらロドルの背後に近づく。  扉の正面、小屋からはかなり離れているが、鋭い神氣をこちらに放っている。 「ああ、俺たちに気づいてるな。他には?」 「強い神氣が五つ、神憑人だ。こっちはわたしたちに気づいていないようだ」 「切り込むか」  いや、とロドルは小屋の扉を少し開き、南東の空を眺める。ここからでは見えないが、その先には仕掛けが設けられた塔がある。 「そろそろ仕掛けが起動するはず……」  呟いた矢先、背筋がピリッと痺れるような感覚が襲った。同時に、ロドルが眺めていた空に蒼い光の柱が立った。塔の仕掛けが起動したのだ。  リクトたちには、あらかじめ〈解封ノ札〉が持たされているため影響は無いが、これでカダロフ内にいる者の中で動けるのは神憑人とヴェルンだけとなったはずだ。それも、動きを大分鈍くさせられている。 「行くなら今だ!」  ロドルが扉を開いて外に出た。リクトも跡を追い、ロドルと並んでカダロフの中心部を目指した。時折、複雑に入り組んだ建物の影から奇声を上げて飛び出してくる神憑人を切り結びながらロドルを見やる。
/255ページ

最初のコメントを投稿しよう!