九章 神戦

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 それより、とオズロットは表情を改め、周りの兵士に告げた。 「そろそろ作戦開始の時間です。殿下――」  オズロットは軽くお辞儀をしながら一歩下がると、ロドルは憤りを吐き捨てるように深く息をつき、凜とした表情で前に出た。 「必ず勝って帰ろう、とは言わぬ。そもそもこの戦、勝てる望みなど薄いのだから」  ロドルの声が、夜気の残る森の中で朗々と響く。 「だが、この理不尽な戦に恐れること無く、武器を取ったそなたらはすでに英雄だ。その事を誇りに思い、生きるために戦おう」  決して太くはないが、彼の言葉は胸を強く打ち、兵士たちの目に強い精気に満ちた。 「さぁ行こう。我らの勇気と知恵が神々に通用するか、試してやろう」  笑みを浮かべてそう締めくくると、兵たちは小さく短く、おう! と叫んだ。  やがて部隊は二つに別れてカダロフに近づいた。さらに第一潜入隊は四つに別れ、それぞれ地下通路に入る。  リクトとロドルは彼らとはまったく別の通路からカダロフに入っていった。以前、ロドルがパトランタ神殿に潜入した際に使用した通路で、内郭北西の隅に建てられた小屋が出入り口になっていた。 「凄いな」  通路の入り口は確かに分かりづらい場所にあった。ロドルのあとに続いて藪の中を通り、いつの間にか地下通路に入っていたのだ。そして、出入り口も床板を一枚外しただけで、注意していても見つけられないよう細工されていた。  小屋を出る前、ロドルは再度〈透魂ノ眼〉で外を確認する。しかし、すぐに舌打ちしながら眼を閉じた。
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