二章 生かされた命

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 テオル村は深い森に囲まれている。そのため、土を踏み固めただけの道が闇の中にぼんやりと見え、ランタンの灯りだけでは、頼りないほど見通しが悪い。  日が出てきて、いくらか見通しは良くなったが、今度は、上り下りが急な岩の間にできたわずかな道を通り、滝をこえ、さらに倒木や苔の生えた石がゴロゴロと転がった荒れ道が続く。  荷馬を牽くリクトはもちろん、こういった道にあまり慣れていないヴィーラも、帝都育ちのシェナも、疲れを隠すことができず汗だくになりながら先へ進んだ。  途中、何度か休憩をはさんでいたが、そんな時、リクトはシェナがチラチラと自分を見ていることに気づいた。 「どうかしたか?」  声をかけると、倒木の上に腰を下ろしていたシェナがビクッと身を震わせ、「ほうぇっ?」っと裏返った声で小さな悲鳴を上げた。
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