三章 皇宮での事件

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〈ディオニス正規軍〉。その存在は、田舎育ちのリクトでもよく知るほど有名な軍隊だ。  帝国にはいくつもの軍隊があるが、その総軍――つまり全軍隊を統括する位置にいるのが彼ら正規軍だ。二百年もの長い間、帝国の守りの要となり、教団同様になくてはならない存在だ。  正規軍は第一軍から第三軍まであり、各将軍を総じて〈三将軍〉と呼び、彼らの総大将は〈大将軍〉と呼ばれている。 (しかし、第二正規軍の将軍か……。こんな大物が出払っているってことは、皇宮で何かあったか。しかも、俺と同じ神憑人がらみ……。考えられるのは、やっぱり……)  彼らの言葉を整理しながら、リクトはガーブの言葉を聞いた。  ガーブはシェナを示すように身体をずらしながら言った。 「そして、この方は、ディオニス帝国第二皇女――シルウェステナ・マルクリフ殿下だ」  リクトはガーブを見据えたまま、まったく反応しなかったが、シェナの隣にいたヴィーラは、心底驚いたように目を見開き、弾かれたようにシェナを見た。  ガーブはそんなヴィーラを横目でチラッと見た後、リクトに視線を戻して眉を軽く広げた。 「ほう。お前は驚かんのだな?」 「あんたらの話を聞いて、何となく予想はできた。あんたらが今、抱えている問題もな……」
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