三章 皇宮での事件

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 ガーブは口を開きかけ、ためらうと、しばらく考えてから言った。 「できるという保証は?」 「ない。だが、全力をつくす」  リクトは、熱のこもった真剣な目でガーブをまっすぐ見た。  しばらくしてガーブは深くため息をついた。 「術を解いてやれ……」  それを聞いた兵士たちがざわめいた。動揺する彼らにガーブは言った。 「皇子の力は我々の手にあまる。俺は皇子を、この若者に任せてもよいと、陛下に進言してみよう。安心しろ。責任はすべて俺がとる」  そう言ってざわめきを鎮めると、ガーブはリクトに目を戻した。 「俺は身も心も帝国にささげると誓った。お前のたくらみに乗る前に、陛下にご報告したい。悪いがつき合ってもらうぞ。良いな?」  リクトは、頷くように目をふせた。 「封神具(ほうしんぐ)を持ってこい」  ガーブの命令に兵士の一人が、銀の鎖がついた手錠を持ってきて、リクトの両腕にかけた。手錠をかけられた瞬間、体の力が抜け、激しい重みが体にのしかかった。どうやらこの封神具という手錠には、封神術と同じ力があるようだ。  リクトたちは、一人一人別々の馬車に乗せられた。ガーブはリクトの小太刀と短刀を鞘に収めると、リクトが乗せられた鉄製の馬車に乗り、壁をコンコンと叩いた。 「行ってくれ……」  そして、リクトたちを乗せた馬車は、帝都に向けて出発した。
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