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「しっかし、呑気よねぇ」
マリアの座席の右側に座るタケルが、給湯室の方へ顎を向ける。
そこには、金属製の弁当箱を手にして給湯室へ向かう部長の姿があった。
「マリアちゃんの前の部署で、現地のデバッグにスキー担いでいった疑惑の上司がいたじゃない?」
マリアは、四十代の上司Zの顔を思い出した。彼女が見つけたバグを「通らないルートのバグだから」とか「費用がない」とかで修正しなかった。しかし、後でそのルートは通るように修正されてしまい、バグは残った。それで、サービスイン後にそのバグが原因でシステムダウンが発生し、Zは雪深い現地へシステム改修に呼び出されたのだ。
「いましたねぇ……」
「その上司、あの部長の元部下よ」
マリアは、部長の後ろ姿を二度見した。
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