2.バグの連鎖

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 マリアは、あまりにも単純バグが多くて呆れ、さらにコピーされてばらまかれた同じバグを修正する落ち穂拾いに飽きてきて、プロジェクトリーダBのところへ相談しに行った。 「あのー、あまりにバグが多くて――」 「時間がかかってもいいからやって」  四十代の切れ者といった風体のBは、マリアではなく自分のパソコンのモニターを見ながら返事をする。 「コピーされて同じバグが大量に――」 「grep(グレツプ)かけてsed(セツド)で置換とか」 「単純バグが――」 「単純なら見つけるの楽じゃない? 残業代払わないって言ってないんだから、やって」  取り付く島もないマリアは、「失礼しました」と蚊の鳴くような声を残してその場を去った。
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