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「先輩。あのお怒りのお客様、怖くないんですか?」
ゆっくり振り返ったマリアを見て、目は笑ったままのタケルが、口を一文字にする。
「あんた、顧客の怒号なんか、そよ風よ。エンドユーザの憤怨と比べればね」
「先輩……」
「何よ? 憤怨って噴火した火山の煙じゃないわよ」
「いえ、ネクタイ――曲がってます」
「あら、やだー。直してくれるぅ? 私、この体勢じゃ、無理」
「私もです」
彼女は、タケルに見えるようにお盆を持ち上げた。
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