4.神の手、降臨

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 それからは、完全に作業が分業化した。机上でバグを見つけるのに専念するマリア中心のチーム、試験を実行してOK/NGを判定するチーム。そして、プログラムの修正はカンナ一人。  抜けていた設計書の異常系の記述は、カンナが行った。それに従って、新しくプログラムを組むのもカンナ一人だ。  カンナとの会話はチャットのみ。机に近づいて声をかけようとしても、一心不乱にキー打ち込む姿を見ると、近寄りがたくなる。  そのキーボードを叩く速さは、筆舌に尽くしがたいものだった。指が二十本に見えた者も、叩く音が連続して唸りに聞こえた者もいた。  とても人間業とは思えない。それで、誰もが思った。  ――彼女の手は、神の手だと。  3ヶ月後、無事に納期を迎えた翌日、彼女は挨拶もせず、荷物をまとめて帰って行った。まさに、風のように。
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