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マリアは重い足取りで、会議室のドアの前にたどり着いた。振り返ると、相変わらずタケルがニヤニヤしているのが、ちょっと腹立たしい。
薄いドアの向こうで、ザワザワと複数の声が漏れ聞こえてくる。深呼吸をしたマリアは、器用に片手でお盆を持ち、会話が途切れそうなタイミングを見計らってドアをノックする。3回と教わったが、お盆が気になるので3回目は空振りになり、ノックは2回となった。すると、ドアの内側が嘘のようにシーンとなる。後ろのデスクから聞こえてくるキータッチの音が気になるほどだ。
ドアを隔てて白熱しているのは、某インフラ系システムの開発進捗会議。顧客は部長含め五名、当社も部長含め五名。横長の口の形に並べたアイボリー色の長机を挟んで睨み合っている様子が、声の調子から容易に想像できる。
なぜなら、これで五度目の大幅な仕様変更だからだ。
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