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「失礼いたします」
ドアを開けると、柑橘系のコロンみたいな臭いとタバコの脂のような臭いが出迎えた。上座の五人が一斉にマリアの方を向く。彼女だけではなく、彼女の肩越しにタケルへ視線を向けているようだ。下座の社員の中では、中央で腕組みをする部長だけが目を向けた。
マリアが顧客にお茶を配り、タケルは自社の社員へ配ることになったが、これは暗黙の了解。
彼女は、五人の中央、つまり部長の正面にいるのが部長だと推測したが、顔の感じから三十代前半に見えるし、覇気がない。
まあ、こういう部長もいるのだろうと思って、真っ先に彼の後ろへ近づいた。
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