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マリアが、「どうぞ」と彼の前にお茶を置くと「僕より、あちらを先に」と右手で左側を指し示された。彼の左側の男性は、頭皮に蛍光灯の光が反射するほど禿げ上がっていて、しかも恰幅が良い。さらに、柑橘系コロンの源はここだと判明する。
マリアは「失礼いたしました」とお茶を持ち上げて左の男性の前に置くと、「僕じゃなくて、こっち」と彼も右手で左側を指し示す。
そこには、白髪が一本もない、真ん中分けの痩身の紳士がいた。強烈なタバコの臭いはここからだった。
光る頭をツルツルと撫でる男性が左を向いてつぶやく。
「僕、この五人の中で一番年下なんですよ。でも、お茶は一番先に出てくる。今日は違いましたがね」
その言葉に、顧客全員が吹き出した。
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