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恥ずかしくて今にも泣きそうになったマリアは、挨拶もそこそこに会議室を抜け出す。
空のお盆を胸に抱きかかえて、気の毒なほど赤面する彼女は、行きより重い足取りで床に目を落としながら給湯室へと向かう。タケルは、そんな彼女の顔を覗き込んだ。
「マリアちゃんの男性の上下関係を見る目、バレちゃったわね」
「そんな目で見ていません」
お盆の上の部分で口を隠した彼女は、まだ放心状態のような顔つきだ。
「社会に出たら実地訓練よ、何事も。でもね――」
タケルはマリアの前に立ち、後ろ向きに歩く。
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