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そして、みんなのために
そう言って光一が見上げる古びた天井は、雨漏りで滲んだ安物のベニア板でしかない。‥‥少なくとも、オレにはそうとしか見えねぇ。
だが、この餓鬼には天井の先の大空‥‥更にはその先に無限の宇宙が広がって見えるのかも知れん。
そう、『金が周っている太陽系の外周』ってヤツだ。
‥‥ああ、そうか。やっと分かった。
オレが『金に届かない』と思っていたのは『手』じゃなくて『眼』だったんだ。
金の通り道に、眼が届いていなかっただけなんだ。
今になって、それが理解出来る。
そして。
光一は嬉しそうな声で、こう続けた。
「さぁ、頑張るよ?! そう、『みんなのために』ね!」
完
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