最初の『取引』

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「ズームしろ! 何て書いてあるんだ‥‥何々?『階梯山駅で降りること』‥‥くそ、電車が揺れてて読みにくいな!  『駅のホームの手摺に手を沿えて、歩くこと』『手にヒモが当たったら、そこにフックがあるので、ハンカチを使ってカバンをそれに結びつけること』‥‥『フックには滑車が付いているので、それで下の河の方へ放り出すこと』‥‥か」 「おい! この階梯山駅ってのは、どういう所だ? 誰か知らんか?」 堂上が辺りを見渡すと、近くに居た部下が手を上げた。 「自分はこの駅を使ってここまで出署していますが、山の手駅からなら2時間近くかかると思います。 それで、ホームの下には確かに河が流れています。向こう岸は100mくらいで、ホームからの落差は‥‥20m以上はあると思います」 捜査本部の中に、緊張が走る。 「そうか‥‥そこそこ大きな河だな。しかし、情報はこちらにも伝わった。メールなら通話と違って盗聴される心配は無いという読みかも知れんが、それは甘いぞ? これで先手が打てる‥‥! よし、近くに居る覆面パトに周辺を探らせろ! 電車が階梯山に着く迄にはまだ1時間以上あるが、犯人はそこで既に待機している可能性は充分にある! 急げっ!」     
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