人質、帰還

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人質、帰還

修造が喋り終わる前に、捜査官は一斉にワンボックス車を取り囲んだ。 ‥‥車の鍵を壊して光一が助けだされたのは、その20分後だった。 「ふぅ‥‥やれやれ‥‥。」 堂上は大きく溜息をつくと、閑散としている捜査本部の椅子に身体を預けた。 「お疲れ様です。」 小阪がカップのコーヒーを入れてくれた。 窓の外はもう、白々と夜が明けかけていた。 「‥‥大変でしたね。でも、良かったですよ。人質が無事に戻ってきてくれて」 「けっ! 何が良いもんかい!」 堂上がスネてみせた。 「結局、犯人にゃぁ逃げられるし、身代金は奪われちまったし‥‥お陰でこっちは次長にドヤされるし、記者会見で集中砲火を浴びされられるし‥‥」 「‥‥船はオトリだったんですよね?」 「あぁ、アユ漁用の船だけに『オトリ』だなんて、洒落が過ぎらぁなぁ」 アユ釣りは、囮になる生きたアユを住処へ流し、縄張り確保のために体当たりを掛けてきたところを引っ掛けて釣る『友釣り』という方法をとるのが一般的なのだ。 「バダバタしていたんで自分は聞いてなかったんですが、結局のところ犯人はどうやって身代金を奪って逃げたんです?」     
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