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そして身代金は10倍に
堂上がその晩、捜査本部のドアを再び開けたのは11時をやや周った所だった。
「や、お疲れ様です。警部、疲れましたでしょう。まぁお座りください」
小阪が勧めた椅子にどっかりと堂上は座り、ふぅ‥‥と溜息をついた。
「やれやれ、今日は厄日だ‥‥。犯人には逃げられ、人質の両親には白い目で見られーの、次長にゃド叱れーの‥‥。ついてねぇ‥‥」
「今、お茶を入れますから。ちょっと待っててください。‥‥ところで、その後犯人からは何か指示がありましたか?」
「あぁ?‥‥あったよ、メールがね‥‥一応、写してきた。これだ」
堂上はひょいっとメモ用紙を寄越した。
「えー‥‥何々『約束違反は重罪である。人質の命か、もしくは身代金を10倍にするか、どちらかを選択しろ。次は5日後だ。それまでに選択した方をメールで送ること』ですか‥‥」
小阪は、うっ‥‥と短くうめいた。
「‥‥無茶苦茶ですね。人質の命は論外としても‥‥身代金10倍ってことは10億ですよ、10億。法外にも程があるってものですよ!
小さな子供の命を盾にして、なんて酷いヤツなんだ! まるで悪魔ですね」
メモを持つ小阪の右手が、怒りでワナワナと震える。
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