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人質、帰還
「あぁ。オレ達が間抜けにも間道を見落としたとしても、軽トラが山の反対側から出てきて、だぞ? 更に一旦停車してワザワザ外に旦那を出して、顔を見せて、『旦那が乗った軽トラ』だという事をアピールされたら、誰が『車が違う』と思う?
軽トラなんざぁどれも皆、同じに見えるだろうがよ! まして、真っ暗だったんだし。細かい違いまで覚えているヤツなんざぁいねぇよ」
「なるほど‥‥それで、そのまま猛スピードで予定外の方向に走られたら完全に裏を掻かれますね‥‥」
「馬鹿、感心してどうするんだよっ!‥‥だが、オレたちは見事に引っ掛かったって訳だ!」
「‥‥犯人が軽トラを指定させた本当の理由はそこだったんですね」
「‥‥。」
堂上は暫く何も言わずに、黙って明るくなっていく窓の外を見ていたが、おもむろに口を開いた。
「だがな、小阪。」
「えっ?は、はい。」
突然、話を振られて小阪が慌てて振り返る。
「このまま『負け』では終わらんのだよ‥‥?」
堂上の瞳には、まだ余裕が残っているかのようだった。
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