回転木馬

2/57
130人が本棚に入れています
本棚に追加
/1272ページ
「あぁ、疲れたなぁ」 小さな劇場では大人気でもツインズはまだ全国的には無名に近い。 背の高い俳優なみのイケメンが相原高志(あいはらたかし)。 「そやな、俺の夢は武道館を満員にすることや」 漫才師の中でも常にイケメンランクのトップである。 「そやけどなぁ」 背の低いほうが佐野順一(さのじゅんいち)。 「先に漫才グランプリを獲ろうや。それさえ獲れたら」 佐野は目を輝かせる。 「そやな、漫才グランプリか。おい、最高のネタを早いこと頼むで」 相原はちょっと時計を見た。 「ラストのステージまでちょっとぶらぶらしてくるわ」 「遅れるなよ」 「あぁ、心配するな」 相原が外出した。 1日、多い時には5回も舞台に立つ。 それでもギャラはコンビでワンステージ、たったの五千円。 相原がステージの合間に気晴らししたくなるのも無理はない。 相原ほど社交的ではない佐野はステージの合間も大体は楽屋で時間を潰す。
/1272ページ

最初のコメントを投稿しよう!