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「あぁ、疲れたなぁ」
小さな劇場では大人気でもツインズはまだ全国的には無名に近い。
背の高い俳優なみのイケメンが相原高志(あいはらたかし)。
「そやな、俺の夢は武道館を満員にすることや」
漫才師の中でも常にイケメンランクのトップである。
「そやけどなぁ」
背の低いほうが佐野順一(さのじゅんいち)。
「先に漫才グランプリを獲ろうや。それさえ獲れたら」
佐野は目を輝かせる。
「そやな、漫才グランプリか。おい、最高のネタを早いこと頼むで」
相原はちょっと時計を見た。
「ラストのステージまでちょっとぶらぶらしてくるわ」
「遅れるなよ」
「あぁ、心配するな」
相原が外出した。
1日、多い時には5回も舞台に立つ。
それでもギャラはコンビでワンステージ、たったの五千円。
相原がステージの合間に気晴らししたくなるのも無理はない。
相原ほど社交的ではない佐野はステージの合間も大体は楽屋で時間を潰す。
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