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「へ~、過去のネタのいいとこ取りしたのやな?佐野ちゃん、君はほんまにネタ作りの天才や」
出番までまだ充分時間はある。
つまり相原にすれば佐野よりも劇場への入りは遅かったのだが、それでもここ最近では早いほうだ。
しかも相原は機嫌の良い時は佐野を君付けで呼ぶ。
見下したようにお前とは言わない。
相原もまだまだ現状には少しも満足はしていない。
観客をいくら沸かせてもこんな劇場出演では漫才1回の報酬はそれこそ幼児のお年玉にも劣るのだ。
「佐野ちゃん、今年こそはグランプリ優勝しような。ツインズが漫才師の頂点に立つんや」
相原のやる気に佐野は頷く。
「あ、そうや。ちょっとおもろい話を聞いたよ」
相原がネタ合わせを終え、しばしの休息時間に自ら佐野にお茶を淹れてくれたので佐野はやはりこいつ……本当はいい奴だなと安堵する。
「何や?佐野ちゃん、またおもろいネタでも浮かんだのか?」
相原は熱いお茶をすする。
「飯田茜って知ってるやろ?」
「え………?」
相原は蒸せた。
佐野に好意を持つその女を昨夜、相原は半ば騙して抱いたところなのだ。
「飯田茜?あぁ、三流のグラビアアイドルやってる女か」
相原は悟られないように飯田を軽蔑した。
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