私刑屋

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いつもの由子ならすぐにおろおろして姑に謝罪するのに今日に限って…… 雅子はとうとううどん焼きを床にぶちまけた。 「さ、何を愚図愚図しているの。さっさと作り直しな」 これが一歩外に出ると品の良い女性だと言われている雅子の本性なのである。 「それが女が言うセリフ?」 「はぁ?」 結婚してはや15年。 文字通り初めて由子が姑に口応えしたから雅子はびっくりした。 雅子はずるい。 腕力では嫁に絶対負けることはなくいつでも殴りつけることも出来る。 しかし、あざをこしらえた嫁が外出したら困るからともっぱら言葉の暴力で嫁を支配している。 「そんなに気に入らないのならお前が作れ!」 「な、なんだって?由子、あんたとうとう気が触れたのか?」 雅子が激怒する。 「私はこの15年、1日も気の休まることはなかった。マザコン丸出しのあんな夫に騙されて……」 由子の夫は母である雅子の言いなり。 ただの1回も由子の味方をしてくれたこともない。 由子と夫が夜の営みをしている最中にも雅子はわざと夫婦の部屋に入って来る。 ほこりが残ってないかと本当に指でさんや棚をなぞる。 「由子、私が大人しくしていると思ってつけあがるなよ」 雅子の癇癪玉が破裂した。 雅子は由子に飛びついた。
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