プロローグ

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プロローグ

 小さな村の穏やかな朝。  鶏の鳴き声とともに村人が起き出し、いつもと変わらぬ日常が始まる。  男達が家畜と畑の様子を見に行っている間に女達が朝食の支度し、朝食の良い匂いが村に立ちこめる頃、その匂いに目覚める者が一人。  村から少し離れた丘の上に建つ洋館、村人から厚い信頼を一身に受けるこの村の領主。  年の頃30前後とまだ若く、しかも独身、一人暮らし。  長く艶やかな黒髪を一まとめに結わえ、瞳は草原を映す翡翠色、整った容貌が冷たい印象を与えがちだが、心根は村の誰よりも暖かいと評判で、少し陰のある印象がまたいいと特に若い娘達に人気がある。  普段ならば目覚めの紅茶を飲み、優雅に朝の時間を過ごす。  そう、普段ならば。  ドッゴォォォォォン  突如、村中に騒音が響き日常を打ち壊した。  それが全ての始まり。
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