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村の広場に何かが墜落した。
小さな村はパニックに陥り、誰か領主様を呼んで来いと、村の老人が思い付いた時には領主はすでに広場に到着し、陥没した穴を覗き込んでいた。
見事に陥没した広場に、今年の収穫祭は別の場所でやるしかないなと、見当違いの事を考えつつ中心を見ていると、もぞりと地面が動き、地面から手が――悲鳴が上がるより先に領主が動く。
地面を滑り、中心に着くと、土をどかそうとしている手を迷わず取った。
誰か縄を――叫ぶや誰かが走ってゆく気配。
まだ小さな手だった。
大人になりかけの子供の手。
子供を大事にする領主は、頑張れと声を掛けながら必死に土を掘り返した。
掻き分けても掻き分けても土が崩れてきてきりがない。
このままでは窒息してしまう、焦りだけが募る。
「くそっ」
悪態を付いたその時だった。
「あの……」
か細い声が土の中から聞こえた。
「生きているんだな、待っていろ、今助ける!」
「いや、あの、そうじゃなくてね」
焦る領主に反し、どこか申し訳なさそうな声が領主の足元を指した。
「ちょっと退いてくれる?」
「……」
緊迫した状況下、どことなく暢気な喋り方に少し気が抜け、冷静さが戻ってくる。
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