第1話:出会いは突然に

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「領主様!」  声に視線を上げれば、村人らが縄を調達してきたらしい。  投げる動作をした村人らを制し、掴んだままだった手に視線をやる。 「……」  一歩後ろへ下がると、軽く礼を言われた。 「ん」  二本目の手が出てきたのは、ちょうど膝を付いていた場所だった。 「悪かった」 「気にしないで」  見えた掌を取り、引っ張ってやると、面白いほど簡単に体が土から出てきた。  村人の歓声が響く。  現れたのはまだ10にも満たない金髪碧眼の美少年。  土まみれでも損なわれない美貌に天使かと一瞬誰もが息を飲んだ。 「助かった」  領主の顔を見てへにゃりと笑う。  途端に体中の力を抜いて領主にもたれ掛かる。 「縄を!」  叫び投げられた縄を少年の体にくくり付け、引っ張るように指示する。  次いで投げられた縄で領主が穴から引き上げられ、少年を館に運ぶよう伝えた。 「女達は家に戻って子供らに朝食を、男達は穴に子供が落ちぬよう柵を作りなさい」  長老の言葉にそれぞれが動き出す。  朝から疲労に見舞われた体を引きずりながら館に戻った領主は、ふと後ろを振り返って広場のある方角を見た。 「……」  何もない。  広場だった周囲には障害物が一切なかった。     
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