殺人日和

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殺人日和

 AM5:00  明け方、屋敷の明かりがついた。 「婆さん起きたか──」  殺し屋Kは外の様子を窺っていた。  天候は晴れ。  東南の風。  風速0.3メートル。ほぼ無風といってよい。  今日という日は正に“殺人日和”といってよいだろう。  AM5:45  いよいよだ。  予め屋敷の玄関が見通せる倉庫を借りておいた。  もちろん有もしない架空の人物として──。  亜音速弾を使用したヴィントレス自動消音銃。有効射程距離400メートルの狙撃に特化した銃だ。  “俺は伝説のヒットマン”  標的は間違いなく仕留められる。  AM6:01  玄関の戸が内に開く。  最初に犬が出てきた。  犬種はチワワ。  つづいて老女。  引き金を引く。  パン!  パン!  パン!  標的に着弾。  したはずだった──。  うん?  老女は少し後ろに仰け反っただけで、バネのように跳ね返る。  立っているではないか。  俺としたことが──、  まさか、外したのか?  パン!  パン!   パン!  標的は芝生の上に倒れた。  そうだ!  そうこないと。  クリーニング終了。  これにて退散!  殺し屋Kは銃を急ぎケースにしまう。  荷物をコンパクトにまとめこの場を立ち去った。  いつもなら誰かが通報し、  そろそろサイレンが響くころだ。  茂みに隠してあったカブを引っ張り出す。  しかし、どうしたことか、妙に静かすぎた。  世間も婆さんには冷たいか……  カブにまたがった殺し屋Kはエンジンをスタートさせる。  屋敷の門前でスピードを落とし、敷地を覗いた。  はて?  あれはいったい何だ?  四発も撃ち込んだはずなのにどうしたことだろう。  老女は何事もなかったように犬を連れていた。   いや  正確に言えば、引っ張っているのは犬だ。  犬が婆さんを連れている。  なんてこった!  ぴんぴんしてるじゃないか。  こりゃ仕切り直しだぜ。  殺し屋Kは首をかしげながらカブのスピードをあげ、その場を去った。
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