汚名挽回のはずが・・・・・・

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汚名挽回のはずが・・・・・・

 殺しを失敗失敗したその夜、殺し屋Kは至近距離から老婆を狙うことにした。  マシンガンを背中にしょいこみ、腰に手榴弾、太ももと脇の下に銃を仕込んだ。  万が一警官隊に囲まれた時のために弾薬も持ち込んだ。  これだけ準備万端なら──  間違いなく仕留められるさ。  深夜  0:00  事前調査によると標的は就寝中だ。  殺し屋Kは黒服に目出し帽という服装で、闇夜にまぎれ、屋敷の敷地に入った。  幸いにも犬は静かだ。  ドアをピッキング。  様子を窺う。  犬はまだ静か。  はっ!  耳も鼻も遠い  犬も歳には勝てないか。  ははっ!これは好都合、好都合。    いやいや  いかん! いかん!  油断は禁物、しいては事を仕損じる。  Kは自らを戒めた。  ドアの隙間から滑るように入る。  音もなく移動する。  玄関ホールから、そろりと階段を上がる。  二階の廊下を抜き足差し足忍び足──。  寝室の前に立った。  犬はまだ静か。  勢いよくドアを開ける。  ババババババ  ババババババ  ババババババ  ババババババ  マシンガンを容赦なくぶっぱなす。  掛け布団が天井までふっ飛ぶ。  無数の羽根が雪のように舞った。    退散!  ベットの淵に掛け布団がふわりと落ちる。ボロボロの布切れが、もぞっと動いた。  なに?    蜂の巣になった犬がベットから飛び降りてきた。  つづいて婆さん。  これまた蜂の巣──  ぎゃッ  これには殺し屋の方が驚いた。  もう一度、マシンガンを撃つ。  ババババババ  ババババババ  ババババババ  ババババババ  カチッ! カチッ! カチッ! カチッ!  弾切れだ!  俺としたことが……思わず弾を全て打ち込んでしまった……  これで婆さんも犬もおだ仏さ!  もぞ  もぞもぞ  わぎゃ━━━━━  ホラーだ  まんまホラーだ!  Kは腰を抜かした。  床に転げた状態から太ももに仕込んであったピストルを取り出すとぶっ放した。  パ  ン  !  パ  ン  !  パ  ン  !  パ  ン  !  カ  チ  ッ  カ  チ  ッ  弾  ぎ  れ  だ  !  薄明かりの中に見えたのは、蜂の巣になった骸骨が、自分の片腕を探す姿だった。  ぎゃー  腰にある手榴弾を投げつける  殺し屋Kは腰砕けになりながら部屋を出る。  ボン!  ボン!  ボン!  手榴弾は底つきた。  煙る中  骸骨がよろよろ追いかけてくる。  殺し屋Kは大声で悲鳴をあげながら階段を転げ落ちる。  なんとか立ち上がる。  ベスト下のホルダーに忍ばせた護身用ミニ拳銃を撃った。  パンパンパンパンパンパパンカチカチカチカチ  骸骨の頭部がポロリと落ちた。  骸骨になった老婆は自らの頭部を拾い、小脇にかかえた。  まさかの事態に  武器は底をつきた。  残すは弾薬──  殺し屋Kは家を飛び出す。  途中何度も転びながら庭に向かった。  ゴールしたマラソンランナーのごとく、草むらに折れ込む。隠しておいた導火線を探しだし、ボンタンを押した。        B O O M!  屋敷は跡形もなくぶっ飛んだ。  なんてこてはない。  最初からこうすればよかったのだ。  ははははははははは  ははははははははは  サツが来る前に退散!  屋敷はめらめらと燃えあがる。  上昇気流に乗って、ひらひらと燃えかすがKの前に落ちてきた。  なんだ?  人の形をなしている。  若い女の顔?……  これって人の皮膚?  正確に言えば、人の皮膚を剥いだものだ。  数メートル離れて蜂の巣になった老女の皮。  そして犬  見覚えのある喪服まである……  ひらひらと書類が落ちてきた。  見ると、先ほどの皮だけになった女の身上書だった。  紙には殺し請負人フジイミネ子と書いてある。  きつすぎる香水の香り……  喫茶ロマンで会った依頼人の女に間違いない。 「殺し屋が殺しの依頼──?  いや、殺し屋の皮を被ったあの骸骨が、自分の殺しを依頼したんだ!」 「その通りだ! 殺し屋K! だが、おまえは失敗したのさ。私を殺せなかったのだからね」  骸骨が殺し屋Kの首根っこを捕まえた。 「ぎゃーーーーーーー助けてくれ」 「死ねないのさ、私も犬も」 「約束通り、あんたには死んでもらうよ」    Kの足が宙に浮く。    骸骨はきりきりと首を絞める上げる。  うううううッ……  骸骨の力は半端ないほど力強い。  Kの首に骨の指が食い込む。  ぶらぶらの足下を骨だけの犬がカタカタと鳴きながら走り回る。    グケッ───  殺し屋Kはぷつりとこと切れた。  * 「また失敗──。それにしても、こんな姿にまでなって生きながらえるとは。悪魔になど魂を売るんじゃなかった……」  骸骨はKの目出し帽を引きはがす。  白目をむいた髭面が現れた。 「さてさて、こいつの皮を剥いで、こいつの家に間借りするとするか──。ハチや、おまえの皮も見つけてやらないとな」  カタカタカタカタ  犬は嬉しそうに走り回り殺し屋Kのスネにかじりついた。          
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