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「学校での柳くんは、他人には興味がない自己中心的な人なのに、今の柳くんは真逆に見える。どうして?」  お、おおう……。  今度は、柳が絶句する番となった。意外にも真っ直ぐに目を合わせて放たれた、松雪の言葉に。  「気分が悪いのかって心配して声かけてくれたり、転んだ私に『ごめん』ってたくさん謝ってくれた。すごく親切で優しく見える。でも、学校では人が困ってても我関せずでスルーしてるよね? 『自業自得だ』って冷たく突き放してるのも聞いたことある。だから私、あなたが〝あの柳くん〟だってわかった時、すぐに逃げようって思った」  あ……。 「そうしたら私の名前を知ってるし、別人みたいに笑ってるし親切だし……わ、私のことも聞いてくるから……なので、なんとなくだけど、私も柳くんのことが知りたくなった、の、です。なんとなく、だけど」 「……」  同じだ。  柳の脳裏で、ひとつのワードだけが力強く走り抜けた。  するすると言葉を紡いでいた松雪が徐々に言いにくそうに、小さな声で結んだ最後のひと言が自分と同じだ、と。 『なんとなく、だけど』  松雪も、自分と同じ。なんとなく————ふんわりとした、相手への興味に突き動かされている。 「なんとなく、か……ふふっ……うん、いいよ。んじゃ、今からお互いに告白タイムな?」  笑って松雪の言葉を受け入れた自身に驚きつつ、柳はどこかすっきりしていた。  〝あの眼鏡っ()〟とプライベートで会ってしまったことに焦り、『やべぇ。しまった!』と狼狽していたというのに。  ——けれど、その理由を自分は知っている。 「でもその前に、あんたの怪我の手当てだ。手の甲、擦りむいてる。で、神様への祈願の続き、しなよ。俺のせいで中断したろ?」   『神様、お願いします。お願いします。助けてくださいっ』    遠い昔、懸命に祈りを捧げていた自分と重なる松雪になら、話せる。話してもいい。  そんな確信を、柳は抱いたから。    なんとなく、だけどな——。
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