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しまった!
柳が胸中で発した最初の言葉は、自らの失態への悔やみ。
やべぇ、やべぇ。この子、もしかして、〝あの眼鏡っ娘〟じゃん?
顔立ちを知ってるわけじゃないけど、顔の面積のわりに大きなレンズのこの黒縁眼鏡。それから薄いグレー色の手作りマスク。どっちも既視感ありありだ。やべぇじゃねーか。
実家である神社の境内で出逢った、漫画やアニメのモブキャラそのものの容姿の女の子。その子を同級生の松雪と認識したことで、柳は大いに焦っていた。
「……えーと、立てる? 怪我、してない?」
焦っていたし、ひどく狼狽していたが、自分のせいで転ばせてしまった相手を気遣うことは忘れていない。玉砂利に肘をついたまま動かない松雪に手を差し出した。
「同じクラスの子、だろ? ごめんな。歩けるか?」
「ち、ちっ、違います。人違い、ですっ」
は?
「見ず知らずの私に親切にしていただき、ありがとうございました。それから、さっき私が転んだのは単に足がもつれたからで、決して柳くんのせいではないのでお気になさらず! では、さようなら、柳くん!」
いやいや、人違いとか見ず知らずとかさ、何言ってんの? 嘘じゃん。がっつり俺の名前呼んでるじゃん。二回も。
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