2/5
前へ
/17ページ
次へ
 しまった!  柳が胸中で発した最初の言葉は、自らの失態への悔やみ。  やべぇ、やべぇ。この子、もしかして、〝あの眼鏡っ()〟じゃん?  顔立ちを知ってるわけじゃないけど、顔の面積のわりに大きなレンズのこの黒縁眼鏡。それから薄いグレー色の手作りマスク。どっちも既視感ありありだ。やべぇじゃねーか。  実家である神社の境内で出逢った、漫画やアニメのモブキャラそのものの容姿の女の子。その子を同級生の松雪と認識したことで、柳は大いに焦っていた。 「……えーと、立てる? 怪我、してない?」  焦っていたし、ひどく狼狽していたが、自分のせいで転ばせてしまった相手を気遣うことは忘れていない。玉砂利に肘をついたまま動かない松雪に手を差し出した。 「同じクラスの子、だろ? ごめんな。歩けるか?」 「ち、ちっ、違います。人違い、ですっ」  は? 「見ず知らずの私に親切にしていただき、ありがとうございました。それから、さっき私が転んだのは単に足がもつれたからで、決して柳くんのせいではないのでお気になさらず! では、さようなら、柳くん!」  いやいや、人違いとか見ず知らずとかさ、何言ってんの? 嘘じゃん。がっつり俺の名前呼んでるじゃん。二回も。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加