【一章】三田優:③

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 元カノと別れたのは三ヶ月ほど前だ。これは最近といえるのだろうか。三田自身には未練はさすがにもう無い。同じ大学の女生徒だった。内向的な性格をクールや堅物として勘違いして、告白をしてきたのがきっかけだ。ふんわりとした重力の無い雰囲気と小動物のような仕草に以前から惹かれていた三田は、二つ返事でOKを出した。しかし、結果はご覧の通りだ。三ヶ月ほど経つと、彼女の方があの捨て台詞を吐き捨てて、何事もなかった日常に戻った。 「優しすぎるかあ。きっと元カノのみなさんは先輩の良さを理解できていなかったんでしょうね。でも先輩も悪いと思いますよ」 「優しすぎたところ?」 「優しさっていろいろあると思うんです。『愛』と『恋』が違うように、優しさにも違いがありますからね。そもそも女は優しさなんか彼氏に求めてないんですよ」  仕込みも終わり、厨房から出る。「終わりました?」と彼女は笑い、じゃあ続きはまた今度で、と話を途中で切ってしまった。 「かなり気になるんだけど」  苦笑気味に三田は話すが、内心はただ彼女ともっと話していたかっただけだ。恭香はじゃあ、と腕を組んで目を瞑った。 「三田先輩は明日空いてます?」 「は?」 「明日呑みにいきましょうよ」  がん、と強い衝撃が頭にくらったように視界がぐらぐらと揺れた。 「僕と? 二人で?」 「先輩と私の二人で……ですけど?」 「……いいの?」  もったいぶってるわけではなかったが、話が信じられず、周囲を無意味に見回す。 「私から誘ってるので、その質問は私がするべきだと思うんですけど。それに最初に彼女がいないことも確認してるので大丈夫ですよね」  恭香は頬を掻きながら舌を少し突き出した。頬が少し紅く染まっているのは掻いたせいか、照れているせいか、判断が三田にはつかない。
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