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【一章】三田優:④
「……それからしばらくして、自殺の準備を整え、あの場所に立ち、神倉さんと出会いました」
「そっかあ。それは災難だったね。彼女も君も」
神倉は黙って、邪魔をすること無く最後まで三田の話に耳を傾けていた。
「こんな長話に付き合ってくれてありがとうございます」
深々と頭を垂れる。人生において残りわずかとなった感謝の礼。彼にこそ、それを向けるべきだと思った。
「今もまだ自殺したいって思うかい?」
「それは自殺できなかったくせに、という批判も含まれていますか?」
「そんなことないよ。今回の失敗で諦めたりせず、まだ自殺をする意志があるかどうかを聞いているだけさ」
「意志はあります。やはり恭香のいない世界に未練はないし、生きる意味が無くなってしまいましたので」
「君にとって彼女はそんなに存在の大きなものなのか」
「正直、わからないんです」
三田は正直に答えた。
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