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渡された封筒に視線を戻し、中身を取り出す。中には五枚ほどの便箋に三田優の想いが綴られていた。
三田優の最期のメッセージを隅々までくまなく読む。読み終えた印象は、彼は非常に落ち着いている、ということだった。厳密に言えば、この遺書を書いている時の話だが、筆跡に乱れは無く、淡々と想いが一文字一文字に籠められている。
これはいつ頃書いたのだろうか。死ぬ直前か、それとももっと前に予め書いておいたのか。この文字を見る限りでは、死に対しての恐怖は感じられない。死を受け入れている文章とも普通なら捉えられてもおかしくはないだろう。
第三者の介入した形跡はおそらくどこを探しても出てくることは無い。相澤恭香のそれと同じだった。しかし、私はそこに違和感を持たずにはいられない。
両方とも自殺に見せかけた他殺だとしたら。
そんなことが可能なのか。ストーカーとストーカー被害者。両方自殺するにふさわしい動機がある。客観的に見れば、簡単に解決する自殺の事件だ。いや、簡単すぎるのだ。もう刑事の勘、といった不確定きわまりないものに頼ってはいるが、どこか確信めいたものが心にある。
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